欧州旅行記2・・・欧州での英語体験                                         
 
1.ドイツにて
 
 ミュンヘンで数日、市内観光や中古カメラ屋めぐりした後、あの有名なノイシュバンシュタイン城へ行くことにしました。ミュンヘン市内で観光ツアーを探したのですが見つからず、普通に鉄道、バス、最後には馬車と乗り継いで行くことに。結構面倒でした。
 
  鉄道は確か単線で、途中でブッフローエとかいう駅で乗り換え、フュッセンという駅からバスに乗ります。最初の路線で、私は座席に荷物を置いて、周囲の田園地帯を眺めながら通路をぶらぶら歩いていました。車掌が隣の車両を歩いて近づいて来るのが見え、ドアを開けてこちらの車両に乗り移ってきたのですが、私を見るなり指さして、

  Change at Buchloe! (ブッフローエで乗り換え!)

と叫んだのです。
 多分、一瞬にして、「こいつは観光客、多分日本人、行き先はあの城」と判断したんでしょう(とにかくあの城は日本人観光客多いですから)。それは間違っちゃいなかったんだけれど、何も聞かずに断定できるのか、ちょっと不躾じゃないか、と半ば感心半ば呆れながら、私は、
  I see,I see
 とやり過ごしました。ちゃんと英語で言ってくれたわけですし、親切心の表れには違いない(もちろん私は乗換駅のことは知っていましたが)。粗野ではあっても実のある態度、まさにドイツ流ってもんでしょう。 
 


 フュッセンに着いてから、バスに乗ったわけですが、ごく普通の田舎のバスです。オーストリアとの国境近くの山中を走っていて、乗客はほとんどが現地のおばさん達でした。峠のような所でバスを降りるのですが、いざそのバス停に近づいても、周りにそれらしい看板も雰囲気もありません。「隣のトトロ」にも出てきそうなただの峠のバス停なのです。

 私はちょっと不安になって、運転手の横の降車口に向かいながら、「ここでいいのかなあ」とキョロキョロ左右を見ていました。しかも他に降りそうな人が誰も居なかったのです。「こんな山中でおいてけぼり食らうのは嫌だなあ」と思ってると、バスの後部席にいたおばさん達が、一斉に腕を振りかざしながら、

  Castle ! Castle!(お城!、お城!)

 と叫び始めたのです。なんだか全員必死に腕を振りながら叫んでいて、私は「ナチスの党大会でもこんな風に・・・・」とか思いながら(ま、ウソですが)、安心して降りることが出来ました。おばさん達にお礼の会釈をすると、みんな興味深そうにこちらを眺めていました。「日本人がこんな山の中までやってきて」なんて思ってたのでしょうか。
 
 ここでのポイントは、全員が、Castle という単純明快な言葉を使ってくれたことです。Das ist・・・だの、Neushwansteinがどうだだの、Burg(ドイツ語でお城)だのを使わずに、全員が相手を考えて、簡単で意味が通じやすい英単語を使ってくれたわけです。

 ま、外国人相手なので、当たり前と言えば当たり前なんですが、後述のイタリアじゃ全然違って意思疎通に苦労しました。簡単なことですが、こういう時の言葉の選択にも、一般民衆の知恵のレベルが現れていると思います。またその意思伝達をしようという熱心さにも、「さすがにドイツ人、一途だなあ」、と感心した次第です。
 

 で、そのお城に着いたわけですが、この城のことは色々な所で書かれてるでしょうから省略するとして、一番驚いたのは、日本人の多さです。
 ここでは、案内人が一定数の集団を連れて説明しながら城内部を回るのですが、説明用の言語は3カ国語に限定されていて、確か、ドイツ語、英語、そして日本語でした。お城の中庭に3つの言語ごとに列が出来ていたのですが、日本語の列が他を圧倒しているのです。他の2言語が国際的な言語で、日本語は日本だけの言語であるにもかかわらず、2倍以上の長さになっていました。好きだなあ日本人は、と思いつつ私も庭一杯に伸びた日本語の列に並んだことでした。


 
 話は前後しますが、その前ミュンヘンの市内観光で、観光バスに乗ってみました。女性の車掌が説明してくれたのですが、その車掌は5カ国語(英語、ドイツ語、イタリア語、フランス語、スペイン語だったかな)で説明できるのだそうです。そして、その時の乗客の分布に応じて、3カ国語を選んで説明していくのです。最初に各乗客に、どの言語を希望するかを聞いていくわけですが、私は指されたとき一応冗談で「ジャパニーズ」と言ってみたら、笑いながら、それは無理だってことだったので「イングリッシュ」と答え、結局、イタリア語、スペイン語、英語での説明となりました。
 で、この人の発音が実に明瞭なのです。スペイン語、イタリア語は私は理解しませんが、聞いていて分かった気になるぐらい、イントネーションも含め、実にしっかりした、それらの言語らしい発音でした。もちろん、英語での説明も分かりやすく、乗客はみんな満足していたようでした。ドイツ人てレベルが高いんだねえ、と感心したものでした。 

 



2.イタリアにて
 
 打って変わってイタリアでは、面くらうことばかりでした。とにかく、ホスピタリティー(もてなしの心とでもいうのか)がないし、やってることのレベルが低すぎるのです。観光で稼いでるクセに何考えてるんだろうと不思議な感じさえしました。
 
 ローマ駅だったか、切符を買ってたら、ブースに入っている女性の係員が、突然喚き始めたのです。何か必死にイタリア語で叫んでいるのですが、何が言いたいのか分かりません。「ええ?」と思いつつ、こちらもどうすることもできずにいたのですが、暫くすると喚きは止み、ひどく怒ったような顔をしたまま切符を売ってくれました。一体なんだったんだろうと思いながらホームにいくと、ちょうど私が乗ろうとしていた方面行きの列車が出たところだったのです。つまり、すぐに列車が出るから急いでホームに行け、とその人は言っていたようなのです。
 だったら、go とか、hurry とか、run とか、世界共通の言葉があるじゃないか、それを言ってくれたらいいだろうに、と思ったのです。ドイツじゃ田舎のおばさんだって適切な言葉を選択するのに、イタリアじゃ鉄道関係者でもこれかい、と呆れたものでした。
 

 もっと酷かったのは、ローマ、ナポリを通る長距離列車でのことでした。車掌に数字を告げる必要があって、私は、7(セブン)と言ったのですが、車掌が理解しません。車内の数字の貼ってあった所の5を指さして、「アア?」とか言ってるわけです。別にわざとやってる風でもなく、なんというか人の良さそうな、呑気そうな顔をして言うのです。

 この地球上に、英語で7と5の区別が付かない奴がいるのか、しかも、国際的な観光都市を通る長距離列車の車掌が知らないなんて、と一種のカルチャーショックを受けてしまいました。ジャクソン5や、フィンガー5、007、ウルトラ7を知らないのだろうか、耳に入れずにどうやって生きてきたのか、固有名詞も全部イタリア語に直してるのだろうか?(うち2つは冗談です)。サハラ砂漠やアマゾンの奥地ならいざ知らず、ヨーロッパじゃ英語使用がデフォルトだと思ってましたし、実際大概の所でそうだったのです。列車の車掌をやっていれば、数字は、時間、座席、列車番号と頻出で、しかも観光都市を通るのであれば、共通語である英語の呼び方を知っていないとやっていけないと思うのですが。ちょっと信じられない話です。
 

 またローマ市内で観光バスに乗ったのですが、このガイドがまた酷くて疲れました。英語で案内するのですが、案内文の英語の音声だけを丸覚えしたらしく、抑揚やアクセント、文の区切りなどがはっきりせず、まるでお経のようなのです。意味がとれず、頭がおかしくなりそうでした。アメリカ人の家族が同乗していたのですが、降りた途端に、子供が「別のバスに乗ろう!」と叫んでいました。ドイツのバスガイドと比べて(以下略。

 

 イタリアの全てが駄目だったわけではなく、多くの公共機関(ホテルや鉄道、観光関係)では、ちゃんと英語は通じました。しかし、全然通らないところもかなりの割合であり、英語を使われるのを屈辱のように受け止めているところもあったのです(私の言ってる英語というのは、単に単語を並べる程度のものです)。コンプレックスの混じった表情を返してくるのです(ソレントのチケット売り場じゃ、英語を完全拒否されました)。

 只の田舎の町ならしょうがないとして、なんで観光地でこうなんだと、ほんとに不思議なことでした。自分たちの世界から出て、少しは旅行客の立場に立ってほしいものです。これがアフリカや中東ならあり得る態度かもしれないし、そういうことを面白がる旅行もあるのかもしれませんが、欧州ですからねえ。ナポリターナとかオペラとか音楽は好きだし、システィナ礼拝堂の壁画とか素晴らしいものはいくつもあるんですが、一般民衆のレベルがちょっとおかしい。

 一体なんでこんな国と同盟を結んだのか、改めて昔の指導者の見識を疑ったものでした。

 

3.フランスにて
 
 よく英語を拒否すると言われるフランスですが、実際は大抵の所で通じて問題ありませんでした。ただ、パリでカメラを盗まれて、警察に被害届を出しに行ったとき(それがないと保険金が受け取れなかったのです。ちょっと高めのカメラでした)、それに遭遇しました。警察署の係官が、「ここはフランスだから、英語は使っちゃいけない」みたいなことを言ったのです。昔のフランスのギャング映画に出てくるような、表情は柔和だけれど真面目そうな小柄な警察官でした。ちなみに何語でそういうことを言ってたのかよく覚えていません(笑)。多分英語だと思うのですが。
 その警察官は厳しい態度を崩さず、フランス語しか話しませんでした。一方私は、英語だけで応答していて、緊張感が続いていました(笑)。書類には英語が併記してあったので、手続きには問題ありませんでした。

 で、一通り終わって、私が、「カメラは盗まれたけれど、パリの街はとても好きだ、散歩するのに気持ちが良い」みたいなことを言うと、突然その警察官の表情が崩れ、すごく嬉しそうな顔つきになって、いきなり英語でぺらぺら喋り始めたのです。そして色々と旅行の感想などを聞いてきたりして、最後はにこやかに別れることが出来ました。
 
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