フラグスタートの歌唱-Kirsten Flagstad 

☆ライナー指揮「オランダ人」、37年録音、フラグスタート他、ハイライト(SRO-808-1)

これの全曲版も一応CDで出てるのだが、HMVで注文しても手に入らなかった。
ライナー指揮、コベントガーデン歌劇場、オランダ人をHerbert Jansen、ダーラントをLudwig Weber、エリックをMax Lorenz、
録音は、オケはあまり強くは聞こえないが、声は問題ない。

最近、フラグスタートの歌に嵌っていて、色々聞いてる。37年頃は彼女の絶頂期。国内で新品が手に入らなかったので、ebayを見てたら、ハイライト版が見つかった。安価ではあったが、送料がその1.5倍ぐらい(笑)。総額2千円弱で手に入った。まあ、国内の中古屋さんではその何倍もの値段で売ってるので良い買い物かも。

ただし、このCD、序曲は入ってないし、水夫の合唱もない。曲の切り方も乱暴(笑)。肝心のフラグスタートの声も余り聞けない。他の男声陣の歌はかなり入ってて充実している。オランダ人もダーラントも良いが、特にエリックのローレンツは素晴らしい。この3人の絡みは重厚で、他ではちょっと音が薄く感じる事もあるこのオペラだが、この盤ではそういった事はなく、満足感がある。ソロ陣の充実度に関しては、今まで聞いた中でもトップクラスかもしれない。

肝心のフラグスタート、ゼンタのバラッド。これはちょっと驚いた歌い方だった。ヒステリックではないのだ(笑)。ちゃんと歌として歌ってる。柔らかいトーンで通してる。高音域は優しく、伸びやかで美しい声。改めて感心してしまった。これだけでも十分価値があった。
最後の重唱の辺り、他の男声陣やオケの上に声が浮かび上がる。相変わらず素晴らしい。
(2015/1/28

☆ グリーグ歌曲集
フラグスタートリサイタル2(DECCA 480 1804)の、CDー1に14曲、CDー2に5曲、あとはNAXOSから出てる、グレイトシンガーズシリーズに、上のCD1の中の8曲(山の娘)がある。他にもあるのかもしれないが。

CD-1には「山の娘」8曲と、「君を愛す」「睡蓮」、「夢」などの名曲がある。どの曲も丁寧で繊細な、しかも、比較的強い声で歌われた深い響きのものである。ただの叙情曲にはなっていない。それが他の歌手との違いか。

アンネ・ゾフィー・フォン・オッターやアーネセンのとは違う。オッターのは好きだったが、若干表情過多で、オペラチック過ぎるかなあ、という気もする。あとはディスカウや、Siv WennbergというソプラノのCDで聴いたが、何かこの人のは特別である。どんな言葉を使えばいいのかはわからない。思いついたら書いていく(笑)。

録音された時期は、「山の娘」は40年、他は良くは分からないが、伴奏者が同じエドウインマッカーサーなので同じ時かも。ただ、ブログにYOUTUBEのを出してるが、36年録音の「君を愛す」など時期の違うものがある。

個人的な話になるが、あるコンサートを聴きに行った時、この「君を愛す」をやってて、私はてっきりベートーベンの同名の曲かと思って、「えらく近代的な響きのを書いてたんですね」、って言って恥をかいたことがある(笑)。それまでグリーグの歌曲なんてほとんど知らなかった。ソルベーグの歌ぐらいは知ってたが。ただ、この曲はいたく気にいったので、楽譜店にいってこの曲の入ってる曲集を探してもらい、とりあえず、これだけ歌ってみた。その後は、外国出版のグリーグの楽譜集を買って一通りやった。繊細ないい曲が多い。そのうち幾つかは発表会でも歌った。またMIDIにもしてみた。→ MIDI曲集

「薔薇の時」や「白鳥」などの名曲は歌ってないのだろうか。「ソルベーグの歌」とかは。これは私は子供頃に何かの歌集に入ってたので知って気に入って、布団の中でも歌ってて怒られた事がある(笑)。「過ぎし春」はロンドンのラストコンサート?で歌ってるが。ちなみに、グリーグもフラグスタートもノルウェーの人。だからやってないはずはないとは思うが。
(2015/1/29)


☆ グリーグ歌曲集2
新しいCDを購入。上記とは別の演奏で色々入っていた。Flagstad EMI Recordings(5CD)
1.夢(op48-6)
2.ご忠告ありがとう(op21-4)
3.過ぎし春(op33-2)
4.モンテピンチョ(op39-1)
5.青春(op33-1)
6.愛の神(op70-1)
7.ロンダーネにて(op33-9
8.夢(op48-6)
9.白鳥(op25-2)
10.胸の痛み(op33-3)

以上、フィルハーモニアorc、指揮は、Warwick Braithwaite (1, 2, 4-9)、Walter Susskind (3)1948年録音

11.睡蓮を手に(op25-4)
12.王女(1871)
13.流れに沿って(op33-5)
14待ちながら(op60-3)
ピアノ伴奏、G.ムーア、1948年録音


15.睡蓮を手に(op25-4
16.そしてわたしは恋人が欲しい(op60-5)
ピアノ伴奏、E.マッカーサー 1937年録音


17.母の嘆き(op15-4)
18.ソルベーグの歌'op23)
23.バラに囲まれて(op39-4)
オスロのオーケストラ、1929年録音
(1と8の夢は同じ演奏か?)


相当古い録音も含まれている。29年のものとか(35歳時)。さすがにヒスノイズが聞こえたりするが声は問題ない。 夢、白鳥、過ぎし春、睡蓮を手に、ソルベーグの歌などの名曲がある。ワグナー歌手の本領をいかした息の長い歌い方。とりわけ、過ぎし春の歌い方は圧巻。きわめて遅いテンポで通してて、まるでパイプオルガンのように歌っている。声の深さと美しさは素晴らしい。
まあ、名曲といったのは自分が歌ったときの印象で勝手にいってるだけだけど(笑)、フラグスタートの歌で聞けばどれもいい。いつまでも聞いていたいような素晴らしい演奏。バラに囲まれてなどは、手元のグリーグ歌曲集(Peters版)には入っていないが、いい曲だ。モンテピンチョもいい。薔薇の時は入ってなかったが、どこかにないのだろうか。
(2015/2/17)


☆ クナッパーツブッシュ指揮「ワルキューレ」第一幕、Svanholm、Mill、57年録音

名盤と言われている演奏。確かに素晴らしい。しかし、これはクナッパーツブッシュとウイーンフィルを賞賛すべき録音だろうと思う。ウイーンフィルをまるで楽器のように操り、思うままに歌わせ、歌手に伴奏させる指揮者。柔軟に答えるオーケストラ。緩急、ダイナミズムの変化、悠揚としたテンポ。ここで歌ってってるのは、歌手じゃなくて、指揮者とオケ。

フラグスタート-とスヴァンホルムも美しく高貴だ。しかし、残念なことに、二人とももうキャリアの末期だった。すでにフラグスタートは舞台を引退し5年後には亡くなる。スバンホルムも、メットややロンドンのオペラハウスからは引退し、舞台監督に仕事は移っていた。二人とも声は相変わらず美しいが、力と高域での輝かしさが足りない。特に、終盤の「冬の嵐は去り」、「あなたこそは春」が今ひとつ不満である。身勝手な不満ではあるが。

この録音にはよく知られた経緯があって、録音プロデューサーのカルショウが無理やり頼んで出てもらったらしい。フラグスタートは余り乗り気ではなかったらしい。ステレオ録音で残してくれたことはありがたいが。

ジークリンデはショルティ盤のクレスパンがなかなか良かった。声が細めでクールな歌いぶりで、ワーグナーの雰囲気とは違う感もあるが、ジークリンデには合う。フォーレやシューマンも良い。


☆ ラインスドルフ指揮「タンホイザー」 メトロポリタン、メルヒオール他、1941年録音
出演者
Tannhäuser - Lauritz Melchior
Elisabeth - Kirsten Flagstad
Wolfram von Eschenbach - Herbert Janssen
Venus - Kerstin Thorborg
Hermann, Landgraf von Thüringen - Emanuel List
Walther von der Vogelweide - John Dudley
Biterolf - Mack Harrell
Heinrich der Schreiber - Emery Darcy
Reinmar von Zweter - John Gurney
Hirt - Maxine Stellman
Conductor Erich Leinsdorf、Chorus & Orchestra - Metropolitan Opera

大変素晴らしい、とりわけメルヒオールとフラグスタート。いうまでもない事かもしれないが。特に第二幕は感動的だ。第三幕が目当てで聞くことが多いのだけど、この演奏の第二幕には感嘆するばかり。メルヒオールが劇的な歌唱で他の歌手に絡んで行くのが実に面白いというのが基本にあるのだが、それを最初と最後に締めるフラグスタートの歌唱が圧倒的である。とりわけ、タンホイザーがベーヌスブルグの名前を出したあと、怒った人々が剣を抜いて切りかかろうとする時に間に割って入って歌う、「残酷な者達よ、剣を捨てて」は素晴らしいとしか言いようがない。おそらく、今まで聞いたフラグスタートの歌の中でもベストの一つ。罪あるものにも悔い改めの機会を与えよ、と切々とまるで天上から語りかけてくるかのように歌う奇跡的としか言いようのない歌唱である。

ここで、この演奏の日付に注目しないわけにはいかない。あまりこういう聞き方はよくないとは思うが。
1941年1月4日
どんな時期であったのか。
1939年9月、ナチスはポーランドに侵攻、ソ連にも攻められたポーランドは1ヶ月で降伏した。
翌40年4月、ナチスは、フラグスタートの母国ノルウエーに侵攻した。同時にデンマークににも侵攻し小国デンマークは2時間で降伏した。ノルウエーは6月まで抵抗するのだが、やはり降伏。王家はイギリスに亡命した。
同年5月ナチスはベネルクス3国とフランスを攻撃し、1ヶ月で占領した。ヨーロッパ半島の殆どはドイツの支配下に下った。その翌年初頭の演奏という事になる。

そんな状況で歌われた「残酷な者達よ、剣を捨てて」である。フラグスタートの脳裏に欧州や母国の状況が映っていなかったとはとても言えないだろう。何かこの歌唱には通常じゃないものを感じる。基本的には楽天的な気性に見えるフラグスタートだが、ここには何か違うものがある。

しかも、フラグスタートはこの年、夫の側にいるために、ノルウエーに帰った。そのためにナチ協力者の噂がたってしまう。占領軍とも仕事上の関係にあった夫は戦後逮捕される。フラグスタート自身、戦後一時期活動を制約されたようだ。

欧州における第二次大戦というのは陰惨だ。欧州全土が戦場になった。戦後の東欧からのドイツ系移民の帰還に際しては、一般人300万人が虐殺されたともいう。アジアの独立に繋がる側面もあった太平洋戦線の方がまだ希望はある。
(2015/4/20